Windows 10サポート終了後の現実解 ── ESU・LTSC・買い替えの判断表

· 更新日: · · Windows 10, Windows 11, ESU, LTSC, サポート終了, 移行, 業務アプリ, IT資産管理

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「買う」と決めた後の手順を4ステップで追加しました(ボリュームライセンスでの購入、管理センターでのMAK確認と必要ロール、端末側の前提更新、`slmgr.vbs`でのキー投入。閉域網向けの電話認証も含みます)。1ドル150円と置いた単純換算である旨を明示したうえで円換算の目安を併記し、期限のタイムライン図と、会社支給PCで個人向けESUを使う場合のポリシー上の問題を追加しました。
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この記事を引用する(DOI(登録済みアーカイブ): 10.5281/zenodo.21547415)

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小村 豪(2026)「Windows 10サポート終了後の現実解 ── ESU・LTSC・買い替えの判断表」合同会社小村ソフト. https://comcomponent.com/blog/windows-10-eol-esu-ltsc-decision/

DOI(登録済みアーカイブ)
10.5281/zenodo.21547415
DOI(前回登録した版)
10.5281/zenodo.21733127

「事務所の共有PCはWindows 11へ移せそうだが、工場の検査装置につながったPCは動作保証がない」「ESUで延命できると聞いたが、費用と手続きが分からない」── 社内に残るWindows 10を、全部同じ方針で片づけるのは難しいものです。

原則はWindows 11への移行です。ただし、移行が間に合わないPCにはESU、Windows 10系を必要とする用途固定の装置PCにはIoT Enterprise LTSC、他に手段がない専用機には期限付きの隔離運用を組み合わせます。大切なのは、全社で1つを選ぶことではなく、PCの役割ごとに選ぶことです。

この記事は、中小企業の情シス担当者・経営者と業務アプリの開発者に向けて、2026年7月時点の一次情報をもとにした判断材料を整理したものです。まず判断表で候補を選び、期限、費用、導入手順、アプリの検証へ進みます。「サポート終了から9か月」「残り半年弱」などの期間表現と図の基準も、2026年7月です。購入・切替の前には、参考リンクで最新の条件を確認してください。

1. まず判断:PCの役割ごとに4つの選択肢を使い分ける

Windows 10を使い続けたい理由を、移行に時間が足りないのか、装置やアプリの制約で移行できないのかに分けます。同じ「まだWindows 10」でも、必要な対策が違います。

選択肢 費用の目安(1台) 延命期限 向いているPC 注意点
Windows 11へ移行(既存PC) OS無償+検証・作業工数 Windows 11のライフサイクルに移行 要件(TPM 2.0等)を満たす事務用PC全般1 アプリ・ドライバー検証(8章)を先に
Windows 11へ移行(買い替え) PC購入費+移行工数 同上 要件を満たさない古い事務用PC データ移行と旧PCの廃棄手順まで計画に含める
法人向けESU $61→$122→$244(クラウド管理は$45〜)。1ドル150円換算で約9千円→約1.8万円→約3.7万円23 最長2028年10月 移行計画はあるが期限内に終わらない台数分 セキュリティ更新のみ。累積購入。22H2必須
個人向けESU 無償(設定同期)〜$30(約4,500円)4 2027年10月12日 登録条件を満たす非商用の個人利用PC Microsoftアカウント必須。会社PCは法人向けで
IoT Enterprise LTSC 2021へ切替 ライセンス+再構築工数 2032年1月13日5 装置制御・検査など用途固定のPC クリーンインストール前提。新規は組込みチャネル、既存機のアップグレードはVLも可6
ネットワーク隔離 運用コスト(隔離・媒体管理・予備機) 期限なし=リスクも無期限 ベンダー対応が存在しない専用機のみ 対策ではなく時間稼ぎ。台帳管理と解消期限を必ず

例えば、「事務用は今年度中にWindows 11へ、間に合わない20台は法人ESUを1年だけ、装置PC3台はIoT LTSCへ載せ替え、ベンダー廃業の1台は隔離して予備機を確保する」という組み合わせが現実的です。ESUの購入台数やLTSCへの切替を決める前に、PCごとの役割と制約を棚卸しします。

読みたい内容に合わせて、次の順に進んでください。

確認したいこと 読む場所
何のサポートが終わり、どこまで猶予があるか 2章:期限とサポート範囲
Windows 11へ移せるか、買い替えが必要か 3章:Windows 11への移行、8章:業務アプリの検証
ESUにいくらかかり、購入後に何をするか 4章:ESUの費用と条件、5章:購入から認証まで
装置PCをWindows 10系のまま残せるか 6章:LTSCへの切替、7章:隔離運用

図の実線は常に成り立つ関係、破線は条件付きの関係です(成立条件は詳細ページの各関係の説明に記載)。関係すべての一覧(全17件、根拠・確度つき)と主要概念の定義は知識マップ詳細ページにまとめています。データ: JSON-LD / Turtle

2. 期限を確認する:Windows本体・ESU・LTSC・Officeは別に考える

2.1 通常版Windows 10のサポートは終了済み

Windows 10 Home / Pro / Enterpriseの通常版は、2025年10月14日にサポートが終了しました。最終バージョンは22H2です。終了後もPCは動きますが、ESUに加入していなければ、通常のセキュリティ更新を含む品質更新・機能更新・技術サポートは提供されません。LTSCは別のライフサイクルなので、同じ「Windows 10」という名前だけでは期限を判断できません。72

対象 期限 備考
Windows 10 Home / Pro / Enterprise (22H2) 2025年10月14日(終了済み) 以降はESU加入機のみセキュリティ更新7
個人向けESU 2027年10月12日 当初1年の予定が2026年6月に1年延長4
法人向けESU 最長2028年10月(3年間) 年単位・累積購入・毎年倍額2
Windows 10 Enterprise LTSC 2021 2027年1月12日 残り半年弱8
Windows 10 IoT Enterprise LTSC 2021 2032年1月13日 長期延命の本命5
Microsoft 365 Apps on Windows 10 2028年10月10日 セキュリティ更新のみ。機能はバージョン2608で凍結9

2026年7月の執筆時点では、ESUに入っていない通常版Windows 10に、約9か月分のセキュリティ修正が適用されていない状態です。Windows 10と11に共通する脆弱性の修正が公表されても、ESU未加入のWindows 10には修正が届きません。「まだ動く」と「更新を受けられる」は別問題です。

2.2 期限を延ばしても、移行先は必要になる

次の図は、2026年7月を基準に期限を並べたものです。「いまここ」は記事の執筆時点を示します。

2025-10-14Windows 10 22H2 サポート終了2026-07いまここESU未加入なら未適用の修正が9か月分2027-01-12Windows 10 Enterprise LTSC 2021 終了2027-10-12個人向けESU 終了2028-10法人向けESU 終了・最長3年Microsoft 365 Apps on Windows 10 も 2028-10-102032-01-13Windows 10 IoT Enterprise LTSC 2021 終了

本記事で比較する事務用PCのWindows 10延命策は、法人ESUでも最長2028年10月までです。用途が固定された装置PCには、Windows 10 IoT Enterprise LTSC 2021へ載せ替えて2032年1月まで使う選択肢があります。ただし、これは更新契約を足すだけではなく、6章で説明する再構築を伴います。

個人向けESUは、2026年6月に期限が1年延長されました。このように条件が変わることもあるため、台帳には採用方針だけでなく、根拠とした期限も残しておきます。4

2.3 Microsoft 365 Appsの更新は、Windows本体を守らない

Microsoft 365 Appsは、Windows 10上でも2028年10月10日までセキュリティ更新が提供されます。ただし、機能更新はバージョン2608で止まり、Windows 10上の問題についてサポートへ問い合わせる場合にも制限があります。9

「Officeが更新されるから、このPCは2028年まで大丈夫」とは判断できません。Microsoft 365 Appsの更新と、Windows本体の脆弱性修正は別です。Windows本体については、移行・ESU・LTSC・隔離の方針を決める必要があります。

3. Windows 11へ移行する:要件とアプリを確認し、段階的に切り替える

3.1 まずハードウェア要件を確認する

インターネットに接続して使う一般的な事務用PCは、Windows 11への移行が原則です。ESUも隔離も、コストやリスクを負って移行の時間を確保する手段と考えます。

Windows 11の主な最小要件は、互換性リストに載った64bit CPU(1GHz以上・2コア以上)、メモリ4GB、ストレージ64GB、UEFIとセキュアブートへの対応、TPM 2.0です。Windows 10 バージョン2004以降から直接アップグレードでき、要件を満たすPCではOS自体のアップグレードは無償です。1

実務上の目安では、おおむね2018年以降の法人向けモデルは要件を満たすことが多く、それ以前の機種は買い替えを考えることになります。ただし、出荷年だけで可否を決めず、対象機の要件を確認してください。

3.2 要件を満たすPCと、買い替えるPCを分ける

要件を満たすPCは、8章のアプリ・ドライバー検証を済ませてから、部門単位などで段階的にアップグレードします。OS費用がかからなくても、検証と入れ替えの工数は必要です。

要件を満たさない事務用PCは、買い替えが現実的です。Snapdragon搭載などArm版Windowsの機種を選ぶ場合は、業務アプリとドライバーの互換性に固有の注意点があります。「Arm版Windowsで業務アプリは動くのか」を先に確認してください。

退役するWindows 10機は、データ移行だけでなく消去と廃棄までを計画に含めます。「Windows PCを廃棄する前にやっておきたいこと」のチェックリストも使えます。

台数が多く、一斉に移せない場合がESUの出番です。ESUは移行しない理由ではなく、移行計画を完走させるための保険として使います。

4. ESUを選ぶ:法人と個人を分け、必要な台数と年数だけ見積もる

4.1 ESUで延長されるのは、セキュリティ更新

ESU(Extended Security Updates)は、サポート終了後のWindows 10 22H2で、重要度Critical/Importantのセキュリティ更新を受けるためのプログラムです。新機能・非セキュリティ修正・通常の技術サポートは含まれません。OSの通常サポートが丸ごと復活するわけではありません。2

同じESUでも、法人向けと個人向けでは対象・購入・管理方法が違います。会社の端末に個人向けの価格だけを当てはめないでください。

4.2 法人向け:毎年倍額で、途中加入も累積購入になる

法人向けのボリュームライセンスは、最低1ライセンスから購入でき、対象はWindows 10 22H2です。最長3年、2028年10月までの延命になります。2

法人向けESUの費用(1台) 1年目 2年目 3年目 3年合計
通常のボリュームライセンス 61ドル 122ドル 244ドル 427ドル
クラウド管理割引の条件を満たす場合 45ドル 90ドル 180ドル 315ドル

価格は毎年倍額です。2年目から加入しても1年目分の購入が必要で、「必要になってから途中加入すれば過年度分が安くなる」という仕組みではありません。年単位の累積購入として見積もります。クラウド管理割引は、Microsoft IntuneやWindows Autopatchで管理するデバイス向けに案内されている経路です。23

追加費用なしの経路もあります。Windows 365、Azure Virtual Desktop、Azure仮想マシン上のWindows 10はESUの対象です。また、Windows 365 Cloud PCに接続するWindows 10端末も、有効なWindows 365サブスクリプションがある間、最長3年間の対象になります。既存のクラウド利用条件を確認してから購入台数を確定してください。2

3年目だけで、3年間の費用の過半を占めます。全台に一律でかけるのではなく、移行が間に合わない台数×必要な年数に絞り、PCの買い替え費用と比較します。

4.3 円換算は見積価格ではなく、予算の桁をつかむ目安

1ドル=150円と仮定した単純換算では、通常の法人向けESUは1台あたり1年目が約9,200円、2年目が約18,300円、3年目が約36,600円、3年合計で約64,000円です。クラウド管理割引なら3年合計で約47,000円になります。

これは現在の為替レートや販売価格ではありません。実際の請求額は為替・消費税・販売パートナーの価格設定で変わります。「年1万円弱から始まり、3年目には3万円台後半になる」という桁感に使ってください。100台なら3年で数百万円規模になり、買い替え予算と直接比較する必要が出てきます。

4.4 個人向け:非商用の個人利用が対象。業務用PCには使えない

個人向けESUは当初、サポート終了から1年間(2026年10月まで)の予定でしたが、2026年6月に1年延長され、2027年10月12日までになりました。既存登録者には自動適用され、追加の手続きは不要です。4

登録経路は、PC設定の同期(Windowsバックアップ)を有効にする無償の経路、Microsoft Rewards 1,000ポイント、30ドルの一括購入の3つです。いずれもMicrosoftアカウントでの登録が必要で、1ライセンスで最大10台まで登録できます。対象はWindows 10 22H2のHome/Pro等の個人利用PCです。地域(EEA等)で条件が異なる場合があるため、登録時の案内も確認します。4

個人向けESUは商用シナリオでは使用できません。小規模事業者の私物PCでも、商用利用なら個人向けの枠へ分類しないでください。登録できるかは所有者だけでなく、用途とプログラムの条件で確認します。この適用条件は、今回の構成整理に際して2026年9月12日に公式案内を再確認し、元の判断表の対象表現を限定したものです。4

30ドルは、先ほどと同じ1ドル150円の仮定なら約4,500円です。ただし、「安いから会社支給PCにも個人向けを」とは考えないことを勧めます。登録が個人のMicrosoftアカウントに紐づくため、次の管理上の問題が生じます。

  • 会社の資産であるPCの更新可否が、個人アカウントの管理下に入る。
  • 無償経路の設定同期を使うと、業務端末の設定情報が個人アカウントのクラウドへ同期される。
  • 退職・異動の際に登録状態を管理できなくなり、台帳でも「誰の何で延命しているか」を追いにくくなる。

業務・商用に使うPCで延命が必要なら法人向けESUの条件を確認し、費用だけでなく登録状態の管理責任も会社側に残すのが安全です。

5. 法人ESUを導入する:「購入」と「更新を受けられる状態」を分ける

「買ったのに更新が来ない」を避けるには、購入後の作業まで計画に含めます。ボリュームライセンスで導入する場合の流れは、次の4段階です。210

5.1 必要なライセンスを購入する

最低1ライセンスから購入できます。2年目・3年目から入る端末は、過年度分の累積購入も必要です。対象台数と移行完了予定を照合して、必要な年数を決めます。2

5.2 管理センターでMAKを確認する

Microsoft 365管理センターの「課金情報」>「お使いの製品」>「ボリュームライセンス」へ進み、「契約」の該当ライセンスIDからプロダクトキーを表示します。確認するのはMAK(複数ライセンス認証キー)です。Microsoft Entra IDアカウントには、Product Key ReaderまたはVL Administratorのロールが必要です。10

5.3 端末の前提更新を適用する

端末はWindows 10 22H2である必要があります。さらに、ESUライセンス準備用の更新プログラムを、公式手順で指定された順序で適用します。必要なKBは固定のメモを使い回さず、作業直前に公式の適用手順を確認してください。10

5.4 キーを投入して認証し、適用状態を確認する

端末で管理者権限のコマンドプロンプトを開き、slmgr.vbsでESUキーのインストールとライセンス認証を行います。インターネットや認証サーバーへ到達できない端末には、公式手順の「電話認証」の経路もあります。閉域網向けの手順も含めて、対象端末に合う方法を確認します。10

キーを入れたことと認証完了は別なので、公式手順の確認まで行います。台数が多い場合は、キーの管理と前提更新・認証をIntuneや構成管理ツールで展開する形になります。

「購入済みなのに更新が届かない」ときは、前提更新とキー投入・認証の漏れをまず確認します。購入と同時に、この4段階を誰がいつ担当するかまで決めておいてください。

6. LTSCへ切り替える:長期利用の候補だが、環境の再構築が必要

6.1 同じ「LTSC 2021」でも、通常版とIoT版は期限が違う

既存の装置PCをWindows 10系のまま長く使いたい場合、本記事で中心となる選択肢はWindows 10 IoT Enterprise LTSC 2021です。通常のEnterprise LTSC 2021と混同しないでください。

Windows 10 Enterprise LTSC 2021は、2027年1月12日にサポートが終了します。2026年7月の執筆時点で残り半年を切っており、今から環境を作り直す対象にはほぼなりません。8

Windows 10 IoT Enterprise LTSC 2021は、2032年1月13日までサポートされます。執筆時点で約5年半の期間があり、既存のWindows 10系装置PCを長期利用する候補です。5

IoTという名前でも、WindowsのデスクトップOSです。装置制御や検査端末など、用途が固定されたPC向けに考えます。通常の事務用PCを一律に長期延命するための置き換え先ではありません。

6.2 「ライセンスを追加するだけ」では導入できない

LTSCへの切替は、延命というより引っ越しです。通常版Windows 10 Proからの単純なエディション切替ではなく、原則としてクリーンインストールを行い、アプリ・設定・装置ドライバーを再構築します。同じハードウェアを使える場合でも、作業なしでそのまま延長できるわけではありません。

ライセンスも別途調達します。新規デバイスは認定ディストリビューター経由のOEM・組込み向けチャネルが基本で、既存の対象OS搭載デバイスをアップグレードする場合にはボリュームライセンスも利用できます。既存機向けのVLはデバイス間で譲渡できないため、調達条件と対象機を確認してください。これは1章の判断表にある、新規と既存機の経路の違いです。6

新しい装置PCを導入する場合は、後継のWindows 11 IoT Enterprise LTSCも候補です。基本線は、既存のWindows 10資産の延命と、新規装置のOS選定を分けることです。各版の違い・入手方法・装置向け構成は、姉妹記事「産業用PCにはどのWindowsを入れるべきか ── Windows IoT Enterprise / LTSC 実践ガイド」で扱っています。

7. 隔離して使う:他に手段がない専用機に、解消期限を付ける

「装置ベンダーが廃業してWindows 11対応版がない」「認証取得済みの検査装置で構成を変更できない」といったPCには、隔離して稼働を続けざるを得ない場合があります。ただし、隔離は脆弱性を修正する代わりにはなりません。装置更新やアプリの載せ替えまでの時間稼ぎです。

隔離運用を選ぶ場合は、次をセットにします。

管理するもの 最低限決めておくこと
ネットワーク インターネットへ到達できないよう物理的に遮断するか、VLANと通信制御で分離する。「普段使わないだけ」は隔離ではない。メール・Web閲覧にも使わない
持ち込み経路 USBメディアと保守用PCの持ち込みルールを決める。専用メディア、ウイルスチェック用の中継PC、必要最小限の共有、別セグメント化を組み合わせる
故障への備え 同じ環境を再調達できない可能性を前提に、ディスクイメージのバックアップと、可能なら予備機を確保する
台帳と期限 どのPCを、なぜ隔離し、いつまでに解消するかを記録する

閉域網でも、USBや保守用PC、共有フォルダーを通じた持ち込みと横展開への対策が必要です。期限のない隔離は、担当者が異動すると「誰も把握していないPC」になりかねません。

隔離で稼いだ時間を何に使うかまで決めて、初めてこの選択肢に意味が生まれます。装置更新の計画なのか、アプリの載せ替えなのかを、台帳上の解消期限と結び付けてください。

8. 業務アプリを検証する:起動だけでなく、導入から装置接続まで確認する

経験上、Windows 10から11への移行でつまずきやすいのは、アプリ本体よりもドライバー・登録処理・接続部品などの周辺です。デスクトップアプリの互換性が高いことと、自社の環境で検証を省略できることは同じではありません。

8.1 最初に、装置ドライバーの対応を確認する

計測ボード、ドングル、シリアル変換、プリンターなど、カーネルモードドライバーを必要とするハードウェアが移行可否の分かれ目です。Windows 11で使える、対象アーキテクチャに対応した64bit署名ドライバーがベンダーから提供されるかを確認します。

「アプリは動くが、ボードの対応ドライバーがない」PCは、単純なOSアップグレードでは解決しません。IoT Enterprise LTSCへの載せ替えや、期限付きの隔離運用など、装置ごとの判断が必要になります。

8.2 ランタイム・登録・接続部品を順に確認する

.NET Framework 4.xはOSのコンポーネントであり、インストール先OSのライフサイクルに従います。Windows 10上の4.8はWindows 10側の扱いに従い、Windows 11上の4.8.1は対応するWindows 11のサポートとともに維持されます。4.x向けアプリはWindows 11でも動くのが基本ですが、古い4.5系を対象にしたアプリは4.8系ランタイム上での動作を、この機会に確認します。11

アプリ資産の棚卸しには「.NET Frameworkから.NETへの移行前チェックリスト」も使えます。

COM/OCX/ActiveXは、アプリが起動する前の「登録」で転ぶことがあります。32bitアプリがWOW64で動く場合でも、インストーラーの権限不足、32bit/64bitのレジストリビューの取り違え、開発機だけにある部品への依存は別に確認が必要です。必ずクリーンなWindows 11へ、インストーラーから導入してください。「COM/OCX/ActiveX開発でハマる登録とbitnessの罠」に詳しく整理しています。VB6ランタイムの扱いは「VB6アプリはいつまで動くのか」を参照してください。

さらに、IE依存と32bit接続部品を洗い出します。WebBrowserコントロール(IEエンジン)、32bit版ODBC/OLE DBドライバー、帳票ツールのバージョン要件は、OSを変えたときに初めて不足が表面化しやすい部分です。

8.3 本番と同じ構成で、業務を一巡する

検証機を1台用意し、インストール → 業務一巡 → 帳票印刷 → 装置接続まで通して確認します。単にアプリを起動する試験では、登録・印刷・データ接続・装置連携の不備を見落とします。

本番と同じ構成で先に一巡し、どの部分が移行を妨げるのかを切り分けることが、結局は無駄な再構築と手戻りを減らします。その結果を1章の判断表へ戻し、PCごとの方針を確定してください。

9. まとめ:棚卸しで分け、延命には移行完了の期限を付ける

一般の事務用PCはWindows 11へ移行し、間に合わない台数と期間だけESUでつなぐ。装置PCはIoT Enterprise LTSCを個別検討し、他に手段がない専用機だけを期限付きで隔離する。これが本記事の基本方針です。

最初に全台を棚卸しし、役割・Windowsの版・アプリとドライバーの制約を確認します。そのうえで、費用、サポート期限、検証と切替の担当をPCごとに決めてください。

法人ESUは毎年倍額・累積購入であり、購入後にも前提更新と認証が必要です。LTSCは環境を再構築する選択肢で、Enterprise LTSC 2021とIoT Enterprise LTSC 2021では期限が違います。個人向けESUやOfficeの更新期限を、会社PCのWindows本体の延命条件と混同しないことも重要です。2108549

「まだ動いているから保留」ではなく、何のために、いつまで残すのかを決める。その判断と、業務アプリの周辺まで含めた検証をセットで進めます。

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合同会社小村ソフトでは、Windows 10で動いている業務アプリ・装置連携ソフトのWindows 11対応(互換性検証、インストーラー・COM/OCX周りの改修、ドライバー対応の切り分け)、LTSCへの載せ替えを含む移行計画の技術面の相談を扱っています。「このアプリはWindows 11で動くのか」を確かめるところからで構いません。

参考リンク

  1. Microsoft Learn, Windows 11 requirements. Windows 11の最小要件(互換性のある64bit CPU、4GBメモリ、64GBストレージ、UEFI+セキュアブート、TPM 2.0)と、Windows 10 バージョン2004以降から直接アップグレードできることについて。 ↩ ↩2

  2. Microsoft Learn, Extended Security Updates (ESU) program for Windows 10. 法人向けESUの価格(1年目61ドル・毎年倍額・最長3年)、累積購入ルール、最低1ライセンスから購入できること、対象がWindows 10 22H2であること、Windows 365/Azure Virtual Desktop/Azure仮想マシン等での無償提供、Windows 365 Cloud PC接続端末が最長3年ESU対象になること、ESUに新機能・非セキュリティ修正・通常サポートが含まれないことについて。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10

  3. Microsoft Windows IT Pro Blog, When to use Windows 10 Extended Security Updates. Microsoft IntuneまたはWindows Autopatchでクラウド管理しているデバイス向けの割引価格(1年目45ドル)など、法人向けESUの購入経路別の価格について。 ↩ ↩2

  4. Microsoft, Windows 10 Consumer Extended Security Updates (ESU). 個人向けESUが2027年10月12日まで提供されること、登録経路が設定の同期(無償)・Microsoft Rewards 1,000ポイント・30ドルの3通りであること、1ライセンス最大10台、Microsoftアカウントが必要なこと、商用シナリオでは使用できないこと、地域(EEA等)により登録条件が異なる場合があることについて(商用利用の条件は2026年9月12日に再確認)。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7

  5. Microsoft Learn, Windows 10 IoT Enterprise LTSC 2021 - Microsoft Lifecycle. Windows 10 IoT Enterprise LTSC 2021の延長サポートが2032年1月13日まで提供されることについて。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  6. Microsoft Learn, Windows IoT Enterprise Licensing. 新規デバイスにはOEMライセンス(認定ディストリビューター経由)、既存の対象OS搭載デバイスのアップグレードにはボリュームライセンスが利用できること(VLライセンスはデバイス間で譲渡不可)について。 ↩ ↩2

  7. Microsoft Learn, Windows 10 Home and Pro - Microsoft Lifecycle. Windows 10 Home/Proのサポートが2025年10月14日に終了したこと、22H2が最終バージョンであること、LTSCは個別のライフサイクルで更新が継続することについて。 ↩ ↩2

  8. Microsoft Learn, Windows 10 Enterprise LTSC 2021 - Microsoft Lifecycle. Windows 10 Enterprise LTSC 2021のサポートが2027年1月12日に終了することについて。 ↩ ↩2 ↩3

  9. Microsoft Learn, Windows 10 end of support and Microsoft 365 Apps. Windows 10上のMicrosoft 365 Appsに2028年10月10日までセキュリティ更新が提供されること、機能更新はバージョン2608で停止すること、Windows 10上での問題に対するサポート対応に制限があることについて。 ↩ ↩2 ↩3

  10. Microsoft Learn, Enable Windows 10 Extended Security Updates (ESU) for physical machines. ESU適用の前提(Windows 10 バージョン22H2に指定の更新プログラムをこの順で適用すること)、Microsoft 365管理センターの「課金情報」>「お使いの製品」>「ボリュームライセンス」タブの契約からMAKを表示する手順、表示にMicrosoft Entra IDのProduct Key ReaderまたはVL Administratorロールが必要なこと、端末側でslmgr.vbsを使ってESUキーをインストール・ライセンス認証すること、インターネットに出られない端末向けの電話認証の経路について。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5

  11. Microsoft Learn, Lifecycle FAQ - .NET Framework. .NET Framework 4.5.2以降がWindows OSのコンポーネントと定義され、インストール先OSのライフサイクルに従うこと、4.8/4.8.1がサポートされるOSの組み合わせについて。 ↩

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よくある質問

この記事のテーマについて、相談時によくある質問をまとめています。

サポートが終了したWindows 10を使い続けるとすぐに危険ですか?
PCが急に起動しなくなるわけではなく、Windows 10は2025年10月14日以降も動き続けます。ただしESUに加入していない限り、セキュリティ更新プログラムは一切配信されません。この記事の執筆時点(2026年7月)で、すでに9か月分の脆弱性修正が適用されていない状態です。インターネットやメールに接続して使うPCであれば、Windows 11への移行・ESU加入・隔離のいずれかの方針を早急に決めることをおすすめします。
法人向けESUはいくらで、いつまで延命できますか?
ボリュームライセンスで1台あたり1年目61ドルからで、価格は毎年倍額(2年目122ドル、3年目244ドル)、最長3年で2028年10月までです。2年目から加入する場合も1年目分をさかのぼって購入する必要があります(累積購入)。Microsoft IntuneやWindows Autopatchでクラウド管理しているデバイスは1年目45ドルの割引価格が案内されており、Windows 365やAzure Virtual Desktop上のWindows 10仮想マシンは追加費用なしでESUの対象になります。なお、ESUで受け取れるのはセキュリティ更新のみで、新機能や通常の技術サポートは含まれません。
個人向けESUは2026年10月までではなかったのですか?
当初は2025年10月のサポート終了から1年間(2026年10月まで)の予定でしたが、2026年6月にMicrosoftが1年延長を発表し、現在は2027年10月12日までとなっています。既存の登録者には延長が自動的に適用され、追加の手続きは不要です。登録方法は、PC設定の同期(Windowsバックアップ)を有効にする無償の経路、Microsoft Rewardsポイント1,000ポイント、30ドルの一括購入の3通りで、いずれもMicrosoftアカウントが必要です。個人向けESUは非商用の個人利用向けで、商用シナリオでは使用できません。会社支給PCだけでなく、私物でも業務・商用に使うPCには個人向けを適用せず、延命が必要なら法人向けESUの条件を確認してください。
LTSCに切り替えれば今のPCをそのまま延命できますか?
同じハードウェアを使い続けられる可能性はありますが、「そのまま」ではありません。LTSCは通常版Windows 10からのエディション切り替えでは導入できず、原則クリーンインストールと環境の再構築が必要で、ライセンスも別途調達することになります。また、通常のEnterprise LTSC 2021はサポートが2027年1月12日までで、いま切り替える意味はほぼありません。長期延命の候補になるのは2032年1月13日までサポートされるWindows 10 IoT Enterprise LTSC 2021で、装置制御用など用途が固定されたPC向けの選択肢です。
業務アプリはWindows 11でそのまま動きますか?
デスクトップアプリの互換性は高く、.NET FrameworkやVB6ランタイムで作られたアプリの多くはそのまま動きます。ただし無条件ではなく、実務で引っかかるのは主に周辺部分です。具体的には、計測ボードやドングルなど64bit署名ドライバーが提供されていないハードウェア、インストーラーのCOM/OCX登録処理やbitness不一致、WebBrowserコントロールなどのInternet Explorer依存機能、32bit版ODBC/OLE DBドライバーの導入漏れなどです。本番のPCと同じ構成のWindows 11検証機を1台用意し、インストールから帳票印刷・装置接続までを一巡して確認するのが確実です。

著者プロフィール

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小村 豪

合同会社小村ソフト 代表

Windows ソフト開発、技術相談、不具合調査を中心に、既存資産が残る案件や原因が見えにくい障害調査に強みがあります。

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